こんにちは!GA MAG.編集長の浅野です。
「IT重説」「オンライン重説」という言葉をご存知ですか?
アナログなイメージの強い不動産業界ですが、法改正もあり、賃貸・売買の領域でデジタル化が待ったなしで進んでいます。
今回は、その代表例である「IT重説」についてご説明しつつ、GAテクノロジーズグループ全体での取り組み事例についてもご紹介します。
そもそも、IT重説とはなんでしょうか。
「ITはわかるけど、重説って何?」という方が多いのではないでしょうか。
重説は、重要事項説明の略。名前の通り、不動産取引において重要な事項(買う、借りるという判断にあたって大切な事項)を説明することを意味します。
土地や物件などの不動産は、当然ながら生活をする上で欠かせないもの。一方で、資産としての価値が大きい分、権利関係や法令など複雑な情報がたくさんあります。
だからこそ、重説はこれまでは宅地建物取引士が対面で行うとされていました(宅建業法第35条)。対面でしっかりと重要な事項を伝えることで、契約後のトラブルを防止する意味があったのです。
重説の項目例(賃貸・売買共通)
・水・電気・ガス等の供給施設・排水施設の整備について
・土砂や津波などの災害警戒区域内にあるときは、その旨について
・契約の解除について
しかし、2013年6月に「世界最先端IT国家創造宣言」が閣議決定。同12月には「IT利活用の裾野拡大のための規制制度改革集中アクションプラン」が策定され、不動産取引における重説の対面原則の見直しが検証対象となりました。
つまりIT重説は、日本のIT化の遅れを挽回する手段のひとつだったのです。
2015年には、まず賃貸物件でのIT重説社会実験がスタート。ビデオ通話機能などを使用することで、入居希望者は店舗に出向かず、非対面で重説を受けられるようになりました。
この社会実験で目立ったトラブルもなかったことから、賃貸においては2017年10月から、IT重説の本格運用がスタート。
売買においては当初、社会実験は法人向けのみでした。しかし、賃貸でのこうした背景から、売買も対象範囲を個⼈まで広げることに。結果、賃貸同様に目立ったトラブルがなかったことから、2021年4月から本格運用がスタートしました。
ここまでのまとめ
・IT重説=「不動産取引における重要事項の説明をオンラインで実施すること」
・IT重説は、日本のIT化の遅れを取り返すためのひとつの手段
・新しい取り組みだったため、まずは「社会実験」というテスト期間があった
・賃貸は2017年10月から、売買は2021年4月から本格運用をスタート
さらに2021年5月、デジタル改革関連法が成立。賃貸・売買において書類(※1)契約の電子化が可能になることが決定しました。公布から1年以内である、2022年5月までに施工される予定です。
※1:宅地建物取引業法第34条、第35条、第37条書面
不動産の契約では、ハンコが必要な箇所が複数ありました。そのため、オンラインで重説が受けられるものの、手元には実際の契約書が必要だったのです。
つまり、説明を聞く側は書類を返送する手間が発生し、不動産業者側は送付作業に時間がかかる、という状態でした。
しかし今後は、書類手続きもすべてオンラインで手続きができるように。不動産取引のオンライン化はさらに進むと見られます。
ここまでのまとめ
・IT重説では、契約書は原本(紙)が必要だった
・2021年5月にデジタル改革関連法が可決。2022年5月までに書類も電子化が可能になる
「テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を。」を掲げるGAテクノロジーズグループ。不動産のオンライン化には、賃貸はサービス開始から、売買は社会実験から参加しました。
時期【種類】 | できごと |
---|---|
2019/09 【賃貸】 | |
2019/10 【売買】 | |
2020/09 【売買】 | |
2021/02 【賃貸】 |
不動産取引のオンライン化が進み、現場でどんな声が上がっているのでしょうか。賃貸・売買それぞれの担当者にインタビューしました。
はい。折しも2020年からは新型コロナの影響で、お客様もオンラインを希望される方が急増したんです。そのため重説はもちろん、商談から契約まですべてオンラインで完結できるように変更しました。
メリットは大きかったですね。
とくに商談もオンライン化したことで、お客様の安全・安心はもちろん、説明する側も移動時間を節約できたのは大きいです。
はい、初回の商談はほとんどオンラインです。
一方、オンラインとオフラインを並行させて気づいたのは「オフラインのほうが信頼関係を築きやすい」ということ。
IT重説やオンライン商談を導入する以前は、セールスが最初から契約までずっとお客様に伴走するスタイルでした。しかしオンラインの場合、商談はセールス、重説は契約チームなど、フェーズごとに担当者を変えるケースが多い。こちらとしては効率的ではありますが、お客様からすると「ずっと同じ人が見てくれる」という安心感を得にくくなります。
だからこそ、都内在住で外出OKな方であれば、ご来社をオススメすることもあります。単に「オンラインがいい、オフラインはダメ」ということでなく、それぞれのメリット・デメリットを理解しつつ、うまく使い分けていきたいです。
これまで対面必須だったものがオンラインでもできるようになり、お客様にとって選択肢が増えたのは良かったと思いますね。
実際、お客様の声でも、オンラインとオフラインで大きな違いはありません。
ただ売買は、物件購入時にローンを使用するケースがほとんど。金融機関のローン申込書は、基本的には紙です。これが解決されない限り、不動産取引の全工程がオンライン化されるのはもうしばらく先だと考えています。
ただ法改正を待って何もしないというわけではなく、現状でできる部分でテクノロジー活用を進めています。
たとえば、商談はオンラインなだけでなく自社開発の営業支援ツール「INSIGHT by RENOSY (旧:DATA ANALYZER by RENOSY)」を使用し、事業計画書、収支シミュレーションを確認しながら検討いただけるようにしています。
また契約後は「OWNR by RENOSY」というアプリを通じて、資産運用をサポートしています。
お客様にとって便利で安心できる環境を、テクノロジーを活用して今後も作っていきたいですね。
比率はあまり変わっていません。現状は一定「対面がいい」という方もいらっしゃいます。オンライン自体に不安がある方もいますし、こちら側の事情として「書類の郵送が間に合わない」というケースもあります。
今はまだ書類を直接お送りする必要があるので、正直オンラインのほうが手間がかかります。ただ、お客様からすればわざわざ移動する必要がなく、便利ですよね。
実際、「手間が省けて楽だった」「日常の隙間時間を使えて良かった」というお声をいただくことが多いです。
今後は「IT重説・電子契約が普通」という方が増えると思いますね。移動や返送などの手間がなくなるので、ほとんどの方がオンラインを選択するのではないでしょうか。
コロナ以前に比べ、在宅ワークが増えて多くの人がビデオ通話に慣れています。賃貸でIT重説が始まった2017年に比べて、「オンラインという概念がわからない」という人がいなくなったのは大きいと思います。
また、お客様が便利になるだけでなく、電子契約になれば私たち不動産業者側の負担も減ります。電子契約が増えるほど、業務効率化は進むと思います。
電子契約の実現で、賃貸のオンライン化は加速すると思います。個人的には、早くたくさんの方にオンライン不動産取引の便利さを感じていただきたいです。
社内の業務効率化もさらに進めたいですね。
OHEYAGOでは現在、重説をアウトソーシングしています。地方に住む方や、育児中の方が引き受けてくださるケースが多いですね。
「オンラインだからこそ宅建資格を生かして働ける」という人が活躍されるのは嬉しいですし、不動産業界全体にとってもプラスではないでしょうか。
いかがでしたか?
不動産業界も法改正が進み、徐々に状況は変わりつつあります。GAテクノロジーズグループも多くの方に安心と便利を感じていただけるよう、引き続き頑張ります!
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