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新たな役員・執行役員就任者へのインタビューシリーズ。当シリーズでは新任者の経歴や就任の背景、そして今後の目的・意気込みについてインタビュー形式でお届けします。
今回インタビューするのは、2022年1月27日に取締役副社長 執行役員に就任した櫻井 文夫です。
私がまだ学生だった頃は、物件や土地の情報を集める手段が紙しかなく、どの企業にお願いすべきか、担当者は誰が適切かを決めるにも一苦労でした。その頃父が家を買ったので、「家を買うのになぜこんなに大変な思いをしなければいけないのだろう」と思ったのが、不動産業界に興味を持ったきっかけです。
当時、不動産流通はまだルールができていない新しい業界で、住み替えという概念も浸透していませんでした。開拓の余地がある環境を望んでいたこともあり、当時まだ社員700名程度だった三井不動産リアルティを志望しました。現在のGA technologiesと同じくらいの規模ですね。
三井不動産リアルティの選考には論文があり、私は「なぜ家を買うのがこんなに面倒なのか。不動産も、証券のようにもっと便利にできるはずだ」と書きました。入社後に、先輩方から「面白いことを言うね」と言われましたが、いつか実現しようと本気で思い続けています。
また、三井不動産リアルティはとにかく社員の人柄が良かったですね。ともに働く仲間に恵まれたのが一番幸運だったと思います。
新卒入社後、配属されたのは開発企画課でした。会社が持つ豊富な不動産流通経験を活かし、マンションの企画をし、外部企業にデベロッパー事業をしていただく部署です。物件販売を通して得る知識が重要なので、あまり新卒が行くような部署ではなかったのですが、非常に楽しかったです。
10年ほどマンション販売をメインに、さまざまな仕事をさせていただきました。
大きなプロジェクトを担当させていただくことが多かったですし、パークシティシリーズや大川端プロジェクト、海浜幕張プロジェクトなど、今ではタワーマンションが立ち並ぶエリアの第1号となる案件にたくさん携わらせていただきました。
ジョイントベンチャーの案件に関わることも多く、さまざまな会社とつながりができました。それぞれの企業から若い者が集まることで、互いに刺激になりましたね。
また、その時期にはバブルも経験しました。毎週のように物件金額がぐんぐん上がり、高級物件が飛ぶように売れる衝撃の時期を過ぎ、90年代に金額が一気に下がったんです。とくに私が扱っていたのは都心の物件だったので、値段のインパクトも大きかったですね。非常に厳しい時期でした。
営業課長になり、仕事も楽しくメンバーも揃ってきた頃、突然経営企画部への異動を命じられました。「営業しか経験していない自分が、なぜこのタイミングで?」と驚き、人事部長に確認したところ、「あなたは難しいことや大変なことを好んでやり遂げる」と。私はその人事部長が営業だった際、部下として働いていたんです。自分では自覚していない点を評価してもらえたこともあり、今ではありがたく思っています。
私が経営企画に異動した時には、すでに上場しており社員も1000人ほどに増えていましたが、バブル崩壊後の回復もない中で、経営を見直さなければならない状況にあったのです。私自身、この状況に戸惑いましたが、必死で経営の本を読んで勉強しました。
苦しい時期でしたが、異動から3年経つ頃にはなんとか目処が立ちました。私ひとりでできることは少ないので、全社を巻き込んで推進できたのが良かったですね。多くの社員が信じて協力してくれた経験が大きな力になりました。
会社に挑戦できる余力が生まれたことで、新規事業をスタートしました。コストカットなど削減ばかりでは会社も暗くなりますし、トライ&エラーでどんどん試しましたよ。「決まったことを決まった通りやる」というのは昔から肌に合わなかったので、楽しかったですね。薬局やキャンプ場、医療モールの社長など、なんでもやりました。
それ以降は、立て直しや再構築のフェーズにある事業や会社に携わることが多くなりました(笑)。
「いつも大変なところに呼ばれるね」と言われたこともありますが、私自身はあまりそう感じたことはないんです。きっと自分の性に合っているんでしょうね。「すでにプラスなものをよりプラスにする」よりも、「マイナスな状態をプラスにする」ほうが燃えるんです。
リパーク事業の責任者になったときも、事業再構築のタイミングでした。2006年に道路交通法の一部が改正・施行され、駐車違反の取り締まりが強化されたことを機に、駐車場ニーズは増加しました。しかし、予想外に取り締まりが甘くなるにつれて、業績も悪化していたんです。
事業整理では、それまでの仕組みや業務の進め方を変えなければいけません。そのため、反発したり離れていく人は一定数出てしまいます。辛いことですが、もっとも避けなければいけないのは、会社全体が機能不全になってしまうことです。
長期間業績が悪い状況が続くと、自分の仕事に誇りを持つのは難しいものです。その事業部にいる社員が、自分に誇りを持って働けるためにも、強い意志を持って進めないといけません。ビジョンを明確に持ち、経営基盤を整えることは非常に重要です。
2011年に常務就任後は、リハウス事業の運営責任者を務めたのち、経営統合した賃貸部門を本部にまとめる仕事も担当しました。大型不動産の売買も担当していましたが、賃貸はどうしても金額的なインパクトに欠ける。そのせいか、どうしてもマイナー感が出るんですね。それでも、会社で彼らがプライドをもって、堂々と仕事をするにはどうしたらいいのかを考え、仕組みを変えていきました。
そうした変化についてきてくれる人もいれば、そうでない人もいる。また、そもそも会社が良くなるための変化を望む人がいれば、そうでない人もいます。私は個人主義ではなく、組織で勝つ風土を作ることが最優先と考え、組織体制を大きく変更しました。入社したばかりの新卒がゆくゆくは会社の中心を担えるように、会社のビジョンを伝え続けていきました。
そうした再構築のフェーズで常に念頭におくべきなのは、「変化には時間がかかる」ということ。求める変化が大きいほど、一朝一夕に実現できないことを理解し、腰を据えて取り組まなくてはいけません。
また、現場の声を直接聞くことを非常に重視していました。人を介して知る情報と、実際に現場で見聞きすることには差があるものです。自分の目や耳で情報を取りに行くことは今でも大切にしています。
知人から樋口さんを紹介されました。「一生懸命な好青年」という印象で、たまに食事する関係が2年ほど続きましたが、まさか自分が入社するとは思ってもいませんでしたね。
樋口さんは、会うたびに、不動産業界や経営に関してさまざまな質問をしてくれたので、私も自分の経験や業界の仕組みについて伝えていました。
その後、仕事人生はひと段落し、2021年3月に三井不動産リアルティを卒業しました。役員を20年務め、できることはやり切ったと感じていたんです。
しかし、そこに現れたのが樋口さんでした。
「ぜひ力を貸してほしい。一緒にGA technologiesを世界のトップ企業にしましょう」と誘われたんです。大きなビジョンで思わず微笑んでしまいましたが。
何度も樋口さんの目指すビジョンを聞くうちに、私が40年前に思い描いていた不動産の理想像を思い出しました。「不動産はデジタル化で証券のようにもっと便利にできる」というビジョンです。
居住用の不動産は、内見して、好みに合うかどうかが重要です。完全にオンライン化する必要性は高くないと感じていました。しかし、コンパクトマンション市場について知れば知るほど、IT化の遅れが顕著でありながら、もっともオンライン化に適したビジネスではないかと考え始めたんです。
資産形成が目的のコンパクトマンションは、自分が住まないこともあり直接見ずに意思決定される方も多い。「投資不動産市場なら、完全オンライン化も可能かもしれない」と思ったんです。
また、GA technologiesの成長のためにも、透き通った輝く眼の樋口さんを支えたいと思ったのも大きな理由です。これまではコンパクトマンションをメインに事業を進めてきましたが、今後は既存の事業拡大だけでなく、グローバル展開も見据えています。私はこれまで売買や賃貸を含め、さまざまな不動産ビジネスに関わってきました。そこで得た知識やノウハウを活かせると思ったんです。
樋口さんは2013年の創業から「世界を目指す」と言い続け、実際に上場やM&Aを含め、この9年は圧倒的な成長を遂げてきました。しかし今後進む道は、今よりも更に強い経営基盤が必要です。私は複数の会社経営に関わってきましたし、不動産業界および金融業界の知識や、人とのネットワークもあります。これまでの経験で役に立てる部分を活かして、さまざまな側面で樋口さんをサポートしていきたいと思っています。
会社としてどのような強みと弱みを持っているかをしっかり認識した上で、不足部分をどのように補っていくかを考えています。自分たちで補う場合もあれば、外部の力を借りたほうがベターなケースもあるでしょう。会社としての強みが際立つような体制を整えていくために、社内外問わずさまざまな協力関係を重視していきたいです。
また、人の部分ではやはりGA GROUP SPIRIT(GAGS)がキーになります。GA technologiesにジョインして感じるのは、社員の人柄、GAGSの「HEART」です。入社前に何度か会社に遊びにきた際は、会う社員が必ず挨拶してくれましたし、入社後も各部署が非常に協力的に動いてくれています。
「誰と働くか」は生産性や働きがいにも影響する、非常に重要な要素。GAGSは今のGA technologiesを形作る大切な価値観として、今後も大切にしていきたいです。
撮影:今井淳史
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