新たな役員・執行役員就任者へのインタビューシリーズ。当シリーズでは新任者の経歴や就任の背景、そして今後の目的・意気込みについてインタビュー形式でお届けします。
今回インタビューするのは、2022年1月27日に社外取締役に就任したグジバチ・ピョートル・フェリクスです。
私はポーランドで生まれ、ドイツやオランダ、アメリカで暮らした後、千葉大学の研究員として2000年に来日しました。ベルリッツで異文化間コミュニケーションやマネジメントコンサルティング部門を立ち上げたり、モルガン・スタンレーで組織開発・人材育成、経営者育成を担当した後、Googleに参画しました。アジアパシフィックの人材育成と組織開発とグローバルの育成戦略を担当したのち、2015年に独立し、現在はプロノイア・グループ株式会社を始め複数の会社経営に携わっています。
代表の樋口さんから「人材や組織に関して力を貸してほしい」と連絡をいただいたのは、2021年6月頃です。Our AmbitionとGA GROUP SPIRIT(GAGS)について議論し始めたのがきっかけですね。
組織としてあるべき姿や、成し遂げようとしていること。それらを経営陣が深いレベルで共有し、社員に伝わる内容に落とし込むために議論しました。経営陣合宿も開催し、人材要件や組織のあり方について対話を続けたのです。経営陣は「制度は生物であり、変わっていくもの」という前提を理解したうえで、GAGSの一言一言に至るまで議論し尽くしました。その結果が今のOur AmbitionとGAGSです。
GA technologiesは、会社全体を見ても対話ができており、とにかく面白い会社だと感じました。変化に応じてスピーディに対応する、フレキシブルな人と組織です。最初はコンサルタントとして関わり始めましたが、樋口さんを始め経営陣と過ごす時間が増えるにつれ、強く心惹かれました。とくに、樋口さんは初めて出会うタイプの経営者でしたね。
樋口さんは、わからないことを「わからない」と素直に言える経営者です。この規模の会社で、ここまで素直な経営者を私は初めて見ました。多くの会社では「かっこよく見せないといけない」と思うのか、わからないと言えない経営者がほとんどです。樋口さんのようなタイプは本当にめずらしく、驚くと同時に好感を持ちました。人材育成や組織運営についても、私の知識を積極的に勉強しようとしています。
自分が知らない領域でも、自分なりに考えたうえで、詳しい人や専門家に積極的にアドバイスを求めている。向上心が強くユニークな人ですね。ゼロベースで本質を考えることができ、常識を疑う姿勢がある、非常に稀有な経営者だと思います。
経営陣合宿には取締役や執行役員たちが参加し、必死に議論していました。それも非常に素晴らしいことです。多くの日本の会社は、議論が足りません。互いに「誰かが答えを持っている」と誤解しているのでしょう。
会社は集合知です。それぞれが「今いる立場でどんな貢献ができるか、どんな役割を持ち、チームの方向をどう変えるか」を考え、議論することが重要です。
私が思うに、良い問いは普遍的なものです。たとえば、経営陣なら「自社のミッション・ビジョンとは?」と毎日自分に問いかけないといけません。メンバー個人なら「自分は何のために働いているのか?」という問い。このような問いに対する答えが、組織全体にも影響するのです。
樋口さんは、そうした良い問いを出すのが、得意なのか好きなのでしょう。合宿でも、樋口さんは経営陣に次々と質問してましたよ。そうしたトップの姿勢が、議論しやすい風土を作っているのでしょうね。
不動産テックは非常に裾野が広く、どこに勝機が眠ってるかわからないビジネスです。だからこそ集合知で本質的な課題を解決し、他社が真似できない価値を生み出せるかがポイントになります。
不動産は可能性ばかりの業界です。今年は宅建業法を含むデジタル改革関連法の改正施行も控えており、非常に興味深いタイミングですね。
GA technologiesは「リアルとテック」が大きな強みです。不動産ビジネスはリアルを知り尽くした上で、デジタルを活用していかに発展させるかを考えないとうまくいきません。経営陣にも不動産ビジネスに長年関わったメンバーが多く、現場や顧客の感覚を知った上で事業を進められるのは大きな強みでしょう。
樋口さんは「GA technologiesは自分の人生」と話していました。会社がここまでの規模になると、創業者はファンドを立ち上げたり、事業よりも経営者同士のコミュニケーションに軸足を移す人が多いものです。
しかし樋口さんは、常に「会社のために必要なことをする」というスタンス。この会社に人生を賭けているといっても過言ではないでしょう。その姿勢は、社員だけでなく多くの方に伝わっていると思います。
今後グローバル展開を進めるにあたっては、「多様性」はやはり大事にしてほしいですね。多様な思考を持たないと、もはや世界では戦えません。
以前、建設会社の方に「多様性は不要では?業界は男性ばかりです」と言われたことがあります。しかし最終的にサービスを届ける顧客は、男性だけでしょうか。購入の意思決定は男性しか関わらないのでしょうか。多様なニーズを理解することは日本のビジネスでも重要であり、グローバルにおいては言わずもがなでしょう。
日本にいながら、タイや中国など文化の異なる顧客の価値観や潜在ニーズをいかに理解するかも重要です。フォードが「より速く走る馬」ではなく車を作ったように、ニーズを理解するだけでなく先取りして解決できてこそ優位性が持てるのです。
グローバルにファンを獲得するには、お客様が感動するサービスが必要です。資産運用の知識を自分より持っているとか、細かいニーズにも対応してくれるとか、今の消費者は細かな点までこだわります。提供する側も、それを理解して対応しなければいけません。それができないと、プロとは言えないのです。自分の価値観と相手の価値観、双方を理解して初めて感動レベルのサービスが提供できる。だからこそ多様性が非常に重要なのです。
たとえば、タイは外で食事をすることが多いため、キッチンがない家も多い。インドネシアでは、家事を担ってくれる方々が住む場所を設ける家が多い。このように、文化が異なると住まいで重視するポイントが変わります。その国の社会構造や、変化に応じた提案が必要なのです。
不動産の良し悪しは人々の価値観に基づいて変わります。こちら側がユーザーよりも多様な思考を持つことがますます重要になると思います。
また、より良い組織になるために、マネジメントは一層重要になるでしょう。私は「管理職」という言葉が好きではありません。人の何を管理するのでしょうか。マネジメントとは、人の管理ではなく支援することを指します。メンバーが自分なりのベストな方法を見つけ、最適なアウトプットを出すためにサポートするのがマネジメントです。
マネージャーは、メンバーへの個別の感情に振り回されず、バイアスを持たず、相手が最高のパフォーマンスを出せるよう尽くさなければいけません。そのためにも、自分の価値観や軸を知る必要があります。適切な目標設定やコーチング、チームの建設的な場づくり、リソースマネジメントに至るまで、ベースは自らを知ることにあります。適切なリーダーシップはそこから生まれるのです。
自らの価値観や軸を知ること、つまり自己認識は、マネージャーだけでなくすべての方にやっていただきたいですね。自分はどういう人間で、どうありたいのか。そして、なんのために生きるのかをぜひ考えてほしいです。
GAGSの中で、とくに自分らしいポイントや、それを活かして自分が世界にもたらしたいことがあるはずです。それを認識できたら、チームで自己開示してください。お互いを知ることで、よりよいチームになれるのです。GA technologiesは比較的自己開示ができていますが、この強みをさらに強化してほしいですね。
樋口さんはもちろん、経営陣も社員も、GA technologiesは「Ambition」、つまり野望や野心という言葉が似合う人が多いですね。いい意味のやんちゃさというか、何かを成し遂げたいという強い気持ちを感じます。
私自身もそういうタイプで、避けるべきリスクと取るべきリスクを分けて考え、後者を積極的に選んできました。だからこそGA technologiesには、非常に期待しています。樋口さんという経営者が、そして経営陣や社員のみなさんが、今後どう進化されていくかを楽しみにしています。
写真:今井淳史
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