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【トップ対談】「ネット不動産」時代の到来。業界に起きるパラダイムシフトとGAグループの可能性

CEO 樋口龍 × 副社長 櫻井文夫
KEYWORD
RENOSY 不動産×AI 経営陣 CEO INTERVIEW

Apr

11

Mon

WORDS BY浅野 翠
POSTED2022/04/11
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はじめにINTRO
DUCTION

2022年、不動産業界に大きな変化が訪れます。2021年のデジタル改革関連法の成立にともない、ついに改正宅地建物取引業法が施行されるのです。

インターネットやスマホの普及、そして新型コロナによる生活スタイルの変化により、消費者のニーズとこれまでの法律にはギャップが生じていました。今回の法改正は、それを埋める大きな一歩となるでしょう。

今回はGA technologiesグループ代表の樋口とGA technologies副社長の櫻井が、今回の法改正を皮切りに、不動産業界に起こる変化や進化するユーザー体験、そしてこれからの展望について語りました。

PROFILE
  • 代表取締役社長執行役員 CEO
樋口 龍(ひぐち・りょう)
幼い頃より世界的なサッカー選手を目指し、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成選手として所属。24歳でビジネスへ転身。2013年、株式会社GA technologiesを創業。オンライン不動産取引マーケットプレイス「RENOSY」の開発・運営をはじめ、不動産ビジネスのDX推進に取り組む。2018年7月、創業から5年で東京証券取引所マザーズ(現グロース)に上場。
  • 取締役副社長 執行役員
櫻井 文夫(さくらい・ふみお)
青山学院大学卒業。1982年に三井不動産販売株式会社(現三井不動産リアルティ株式会社)入社。 2007年、同社執行役員経営企画本部長に就任。以降、不動産インフォメディア株式会社やリパークサービス株式会社等、複数のグループ会社の代表取締役社長を歴任。 2011年に三井不動産リアルティ株式会社 常務取締役執行役員を務め、2018年、同社取締役専務執行役員に就任。2022年、株式会社GA technologies取締役副社長 執行役員に就任。

不動産取引が「ネットで完結」する時代がやってくる

QUESTION.樋口さんは今回の改正宅建業法施行によって「ネット不動産時代がやってくる」とおっしゃっています。この「ネット不動産」とはどういう意味でしょうか?インターネットで不動産はすでに探せると思うのですが。
樋口:

1995年にWindows95が登場し、個人が簡単にインターネットを使えるようになりました。その後、不動産メディアが現れ、誰もが自由に物件検索ができるようになりました。20年くらい前のことです。今では、ほとんどの方にとって、ネットで不動産を探すのは当たり前になっていると思います。

しかし検索はできても、そのあとの体験はまだアナログなまま。内見して、申し込んで、契約するという部分はネット化されていません。われわれが考えるのは、購入体験までシームレスにオンライン化すること。メルカリやアマゾンのように、ネット上で簡単に契約できることを目指しています。

QUESTION.櫻井さんは以前就任インタビューで「コンパクトマンション市場はIT化が遅れている」とおっしゃっていましたが、具体的にはどのあたりが遅れているのでしょうか?
櫻井:

厳密に言えば、遅れているのはコンパクトマンションだけではありません。実需(※1)は、お客様にネット化のニーズがありませんでした。「一生のうちに何度も経験することではない」というのもあるのでしょう。また、事業者もファイナンスや登記の手続きで最終的には対面するので、会ったほうが早いという考えがありました。そのため、対お客様というよりも、内部の効率化、営業の生産性を上げるというフェーズが続いたんです。

一方、賃貸は生産性を上げないと事業として成り立たないので、IT事業者や、GAグループのイタンジなど、賃貸事業者を支えるところがどんどん出てきて、実需よりDXが進みました。

GA technologiesにジョインして、コンパクトマンション業界は、仕事の流れからすると実需よりオンライン化しやすいと感じました。ただ、取引の流れはかなり進んでいますが、商品性能を客観的にまとめたものがない。取引だけでなく、商品性能をお客様に明示できるようにすることが、IT化を後押しするのではないでしょうか。

※1 実需:自らが使用する目的で土地や建物を求めること。不動産業界においては、所有者自らが居住する住宅の売買を指す。

樋口:

僕はずっと「不動産をオンラインで取引できるようにしたい」と思っていました。とくに、テクノロジーの介在余地が高いのが投資の領域です。家賃・価格・利回りと数値化されているし、自分では住まない。そういった点に可能性を感じています。

櫻井さんと3年前に初めて会ったときの話が印象に残っているのですが、入社時の小論文で「不動産をオンライン化したい」と書いたと聞きました。櫻井さんがそう書いたのは30年以上も前だと思いますが、オンライン化したいと思ったのはなぜですか?

櫻井:

自分の性格かもしれません。同じことの繰り返しを避けたかったんです。ベースとなる部分は共有して進歩させ、基盤としたいと思っていました。人でなければできないところは他社と競争していくべきですが、共通基盤は同じがいい。怠惰なのかもしれませんね(笑)。面倒なことはやりたくないというか。

樋口:

僕はこれまで、不動産ビジネスにおいては実需も賃貸もやってきましたが、不動産投資に関わることが多かったんです。そこで思ったのは、不動産投資は金融とほぼ同じということ。株式投資と同じような感覚ですね。

僕も投資物件をたくさん持っていますが、物件を見に行かずに利回りと価格で判断します。株もやっていますが、株に近いですね。15年前からこの業界にいますが、このプロセスが改善できれば、もっと売買が簡単になって市場自体が活性化すると日々思っています。

櫻井:

最初から住むことを目的にする方は、手続きが多少面倒でも、それ自体を行事として楽しんでいる部分もあるんです。頻繁に売買するものでもないので、その面倒くささにさえ喜びを感じる人もいたんですね、昔は。

でも最近は、首都圏もマンションだらけですし、売買でも賃貸のような感覚で買い換える方もいらっしゃる。手続きの煩雑さ、書類の多さにうんざりしている方もたくさんいらっしゃると思います。とはいえ最後は登記や融資があるので、ここも含めてシームレスにつながっていけば、かなり大きなマーケットサイズになります。「売ろうかな、でも面倒だな」「買いたいけど電話したくないし、変な営業がきたら嫌だな」と思うことを解決できれば、日本の不動産もより活性化するし、海外標準に合ってくるかもしれません

樋口:

本当にそうですね。今年5月に改正宅建業法が施行され、不動産契約の電子化が可能になります。われわれからすると、本当に待ちに待ったというか。これまでは、ファイナンスや登記の前に、そもそも不動産契約自体を対面かつ書面で手続きしなければいけませんでした。それが法改正によって、非対面かつ電子で契約できるようになる。まずは不動産契約で「紙で、たくさん書いて、会って」というのがなくなるので、ネット不動産に一歩近づくと思っています

櫻井:

これまでは35条書面(※2)・37条書面(※3)を送付し、その真ん中の契約部分はITで、としていました。これが今回の法整備によって、本当にシームレスにうまくいくようになります。とくに売買は印紙税(※4)がかかるので、それも動機になって、すごいスピードで広がるのではないかと思います。

※2 35条書面:宅建業法35条の規定に基づく重要事項を記載した書面(重要事項説明書)。契約締結前に交付される。
※3 37条書面:宅建業法37条の規定に基づく契約内容を記載した、契約の諸条件の内容を確認する書面。契約締結時に交付される。
※4 印紙税:印紙税法で定められた課税文書に対して納付する税金のこと。不動産の売買契約書などが課税文書に該当し、契約書の記載金額によって税額が決定する。電子契約の場合、印紙税は発生しない。

樋口:

不動産は、多くの人にとってあまり身近じゃないかもしれません。賃貸は、多い人でも3〜4年に1回、売買だと一生に1回あるかないか。投資は、何件も買う方もいますが、買わない人もいます。それでも「手続きがめんどくさかったな」という記憶は、多くの人が持っているのではないでしょうか。これまで大変だったものが簡単に契約できるようになるということが、少しでも広がればと思います。

櫻井:

そこにかかるストレスを物件選びの方に使えば、より満足のいく不動産購入ができますよね。

樋口:

アマゾンが現れて小売業界が変わり、より買いやすくなりました。またメルカリが現れて、自分の物が簡単に売り買いできるようになりました。同じように、不動産もたくさん持ってる人はいるので、売買が簡単になれば、日本経済の活性化にもつながると思っています。顧客体験としてもメリットは大きいと思います。

櫻井:

日本は、国民資産の4分の1が不動産(※5)です。また、不動産業界の就業人口は全体の2〜3%(※6)。売上規模も就業人口も、一定のサイズがあります。よりお客様にとって効率的な、良いビジネスにならなければいけません。これまでは事業者も「お客様のニーズも少ないし、紙でいいだろう」という風に構えていましたが、今後はすごいスピードで変わるでしょうね。

※5 国民資産の4分の1が不動産:国土交通省「新・不動産業ビジョン2030(仮称) 参考資料集」によると、国民資産に占める不動産は2,606兆円で、23.9%(2017年時点)
※6 不動産業界の就業人口は全体の2〜3%:国土交通省「新・不動産業ビジョン2030(仮称) 参考資料集」によると、不動産業の従業員数は133.7万人で、全産業に占める割合は2.8%(2017年時点)

樋口:

メルカリでもそうですが、簡単に売れるということは、それまで価値がなかったものに価値がつくことにつながります。不動産も簡単に売買できるようになれば、新たな価値が生まれるかもしれませんし、すでに価値あるものはもっと上がるかもしれません。

櫻井:

そうですね。流通がシンプルになると「次は」とどうしても考えるのですが、やはり商品性能でしょう。そこはGA technologiesが業界を牽引するリーダーとしてやっていかなければと思っています。

不動産流通の活性化、カギは「適切な価格形成」

QUESTION.「商品性能を簡単に伝える」という点についてお聞きします。法改正によって不動産が流通しやすくなるとはいえ、何千万円という高額商品ゆえに、安心感や透明性を求める人は多いと思います。お客様へ提供できる付加価値という点で、各社で差がつくのはどの部分になると思いますか?
櫻井:

仲介業は、ほとんどインターネットに置き換わりました。しかし不動産は、なかなか変わらない。それは、ひとつひとつの商品があまりにも違いすぎて、アナログにしないと購入に至らないというのがあったからです。

似たような業態では、かつて中古車がありました。樋口さんが生まれた頃には整備されていたかもしれませんが、昔は小さな敷地に車が置いてあって、価格が書いてあるという状況でした。そこに大手企業が参入してきて、業界のあり方を一気に変えました。車ごとに評価をし、証明し、保証をつけたんです。お客様はその結果を見れば大体車のことがわかるので、今は現物を見ないで買う方もたくさんいます。商品性能がはっきりしてるからですね。

不動産、とくにコンパクトマンションは、賃料が明確です。しかしもっと品質まで見れる知識と経験がある会社が、基盤を作っていく義務があると思っています。

樋口:

われわれの会社には、AI Strategy CenterというAIの部門がありますが、その取り組みのひとつに「駅力(えきりょく)」の可視化があります。駅ひとつとっても、コインランドリーやカフェの有無などを含めた、駅の総合的な魅力をはっきりわかる人はいません。Google Mapだけではわからない魅力を可視化していきたいと思っています。

あとは建物ですね。管理費、修繕積立金やその運用状況などを含めた「建物自体の価値」がわかるようにしていきたいと思っています。RENOSYは「タテカンさぽーと(※7)」というサービスを提供していますが、それを通じて蓄積されたデータを「総会資料読み取りツール」で抽出し、適正な運用状況や長期修繕計画がわかるようにしていきたいです。

われわれがリーダーとなり、建物自体の価値、駅自体の価値を明示して、購入者の判断の手助けになれたらと思っています。

※7 タテカンさぽーと:RENOSYの賃貸管理プランの一部。建物管理に関する総会手続きの代行などにより、物件の共用部分を適切な時期に適切な修繕などを行えるようにサポートする。

櫻井:

取引は流通と言い換えることができます。そして流通は「どう価格を決めるか」と「どう権利を移転するか」が肝です。

「権利移転」は、今回の宅建業法の改正に加え、今後金融面も変わってくれば、かなり便利になると思います。一方、前者の「価格形成」には、いま話に出たような建物などのさまざまな要素が含まれます。ここをどうバランスをとって、買う人も売る人も納得できるプライシングができるかが重要です。世の中のさまざまな商品は、すごいスピードで価格が変わりますが、同じようなことが不動産でもできるといいですよね。ニーズをとらえ、AIを活用し、お客様が納得できるようにする。スピーディに取引が完了するような進化を遂げていければと思っています。

樋口:

不動産契約手続きが、今回の法案でシームレスになります。ファイナンスは金融機関とのリレーションになりますが、GAグループのRENOSY X(リノシー・クロス)という会社は金融機関に対してMORTGAGE GATEWAY by RENOSY(モーゲージ・ゲートウェイ・バイ・リノシー)というプロダクトを提供しています。不動産契約が電子化されても、みなさん感じているとおり、金融機関の申込でまた紙をたくさん書くことになるので。

櫻井:

私もこのプロダクトには期待しています。もっとさまざまな金融機関と連携し、さらに契約をスピードアップしたいですね。

樋口:

不動産契約、ファイナンス、登記。これらがすべてシームレスになれば、本当の意味でのネット不動産時代が来ると思います。

櫻井:

GA technologiesの中のことは、外からはなかなかわかりにくいと思います。しかし、内部が効率化されているからこそ、適正な価格で商品を提供でき、よりよいサービスができるのです。今回の法改正で、対お客様の部分でも業務が効率化される。だから、ネット不動産時代ももうすぐだと思いますね。

樋口:

櫻井さんからすると、この業界40年ですもんね。

櫻井:

めんどくさいなと思っていましたが、これまでネット化が進まなかったのは、お客様にもニーズがなかったり、商品もバラバラだったというのが背景にあると思います。ただ、マンションはだいぶ整ってきたので、実需は商品性能の整理が終わった段階というところでしょうか。コンパクトマンションは、商品性能の整備もしながら取引を整える段階かと思います。

樋口:

僕は、一棟もビルも金融商品だと思っています。GAグループとして、金融商品としてあらゆる不動産を扱っていきたいですし、できる部分はどんどんやっていきたいと思っています。

櫻井:

首都圏の居住用不動産は、最近では半分くらいが賃貸物件。つまり、お貸しになられているわけですね。お住まいと所有物件を分ける時代になっていて、都心はとくにその傾向が強いと感じます。そうなると、当然管理が必要になりますから、これからマーケットは広がるばかりだと思っています。

樋口:

GAグループには、中華圏最大級の日本不動産プラットフォーム神居秒算があります。海外の方も投資という感覚で、日本に来ずに物件を買われています。

また、ディアライフ(※8)もGAグループに入りました。僕はタイの物件も持っていますが、日本にいる方もリスク分散として、日本の不動産だけでなくクロスボーダーな不動産取引があり得るんじゃないかと思います。

※8 ディアライフ:タイ最大級の日本人向け賃貸仲介事業。2021年11月に事業取得を発表

櫻井:

リスク分散は当然ニーズあるでしょうね。GAグループとしては、今回の法改正で、これまで点だったものが線でつながるイメージですね。

QUESTION.ようやくというタイミングなんですね。最後に、今後の事業展開への意気込みをお願いします。
樋口:

今回の法改正に合わせて事業をやってきたのではなく、これまでGAグループはオンライン予約やマイページという、さまざまなオンライン化の施策をやってきました。金融機関向けのプロダクトもそうですね。今回の法改正で、やっとこれまでやってきたこと、点と点が線でつながるイメージを持っています。やってきたことは間違いなかったと。ただ、今はまだ、登記まで一気通貫でオンライン取引ができるわけではないので、しっかり準備していきたいと思っています。

櫻井:

これまで、樋口さんは会うたびに新しいことを言っていました。今回の法改正を契機に、それがきれいにつながるような気がしています。この次の法改正のタイミングで、MORTGAGE GATEWAY by RENOSYまで一気につながればと思いますね。考え尽くして手を打ってきたというより、偶然の部分もありますが(笑)、GAグループとしてのパワーが結集できると思います。

樋口:

多くの人からすると、不動産業界には良いイメージはないと思います。顧客体験を変えることで、それを一気に変えていきたいですね。今回の法改正は、僕としても非常に楽しみです。

櫻井:

お客様のためにも、ばっちりやっていきましょう。


いかがでしたでしょうか?いよいよやってくる「ネット不動産」時代。私たちの生活も、これから大きく変わっていくかもしれませんね。

今回の対談の様子は、動画でも公開しております。ぜひあわせてご覧ください!

演出:早田 菜美
撮影:藤田 友樹・長谷川 奈波
編集:藤田 友樹
インタビュアー:浅野 翠

それでは次のGA MAG.でお会いしましょう!


写真:今井淳史
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

EDITOR’S PROFILE
  • Corporate PR
  • GA MAG.編集長
浅野 翠
2011年に早稲田大学を卒業後、インターネットイニシアティブ(IIJ)やビズリーチで人事を務める。2018年にGAテクノロジーズに入社。2020年8月より広報を担当。好物はすっぱいお菓子。
Twitter:@midoriii1221
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2022/04/11
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