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GAテクノロジーズは2019年12月9日開催の取締役会において、株式会社Modern Standard(以下、モダンスタンダード)のグループ会社化を決定。同日に記者会見も実施いたしました。
東証マザーズに上場後4社目となる今回のM&A。GA MAG.ではGAテクノロジーズ代表取締役社長 CEO 樋口龍、Communication Design Center(※1)本部長 川村と共に、モダンスタンダード代表取締役である松田氏にインタビューを実施。
プレスリリースでは語りきれない、M&Aの裏側をお届けいたします。
インタビュアー:川村佳央(Communication Design Center本部長)
編集・構成:増田剛士(GA MAG.編集部)
樋口:モダンスタンダードに興味を持つきっかけとなったのは、Googleの検索結果です。
仕事柄、Googleを利用して物件情報などを調べることが多いのですが、その際にモダンスタンダードのページが軒並み検索上位に出てくるんです。最初は気にしていなかったのですが、あまりに頻繁に表示されるため「なぜここまで検索に強いのか?」と疑問に思いマーケティングの責任者に理由を聞いてみたんです。その時に「モダンスタンダードは僕たちがベンチマークしている会社です」と聞き、ますます興味を惹かれました。
その後松田さんと話してみたいと思い、知人を経由して「お会いできないでしょうか?」と打診。それが今年(2019年)の2月頃でした。
樋口:そうですね。もし、モダンスタンダードが不動産の実業をやっておらず、メディア運営のみの会社だったとしたら興味を持っていなかったと思います。PropTech(不動産テック)にはリアルとテックの両方が必要だからです。
そして、モダンスタンダードについて調べていく中で驚いたのが、創業が2009年ということ。
当時はPropTechという言葉すらなかった時代ですが、そんな時代にウェブやテクノロジーの可能性に気づき、創業初期から実業とSEOを両立している。「なんで、そこに気づくことが出来たのか?」と、衝撃を受けましたね。
松田:SEOに注力し始めた理由は、創業時に出資してくださったウェブマーケティング会社から、「GoogleのSEOをやってみたらどう?」というアドバイスをいただいたからですね。当時はYahooがGoogleの検索エンジン導入を決定した時期。「今後はGoogleのSEOを強化することが自社サービスの認知や売り上げの拡大に繋がる」という話を聞き、SEOに注力することを決めました。
松田:「どんなに良いサービスでも、認知されなければ消えてしまう」という言葉がありますよね。前職(不動産仲介会社)での経験を経て、僕たちが提供しているサービスは需要があると確信していました。あとは、いかにして認知してもらうかが課題だったんです。
SEOという考え方があると聞いた時、まさにそこに対して課題感を抱えていたので、SEOに取り組むことは僕にとって自然な流れでしたね。
樋口:松田さんは当然のように言っていますが、実業との両立を実現するのは容易ではありません。不動産業界においては、たとえその重要性に気づいたとしも手を出さなかった人や出せなかった人が大半を占めます。だからこそ、不動産業界は他の業界に比べてテクノロジーの活用が遅れてきました。
ただ、松田さんはそこで足踏みすることなく、自ら率先して実業とSEOの両立を実現しています。その計り知れない努力があったからこそ、モダンスタンダードは高級賃貸領域を牽引する会社になり得たんだと思います。
樋口:まずはビジネスモデルと事業的なシナジーの部分からお話しします。
モダンスタンダードは高級賃貸に特化したサービスを提供する会社。そしてGAは「RENOSY(※3)」を通じて、不動産投資や売却・購入といったサービスを提供し、グループ会社のイタンジはモダンスタンダードとは異なる強みを持つ「OHEYAGO」という賃貸サービスを運営しています。
つまり、モダンスタンダードは僕たちがこれまでリーチすることができていなかった層を中心に顧客を抱えているんですね。
各々が異なる領域でサービスを提供しているからこそ、GAグループとモダンスタンダードが連携することによって、お互いの足りない部分を補完することができる。これはGAが創業当初からこだわっている「ワンストップサービス」における提供価値をより強化することに繋がります。
松田:事業的なシナジーだけでなく、組織的なシナジーも大きいですね。
樋口さんからM&Aの打診があった際、モダンスタンダードはエンジニア不足という課題を抱えていました。SEOのように開発体制も社内で整えることを目標としていたのですが、採用コストなどの問題からエンジニアが採用できていなかったんです。
松田:そうですね。全て制作会社に外注して作っていました。
エンジニアを採用したいと考えた理由にも繋がるのですが、外注を続けていく中で制作会社に開発を委託することに対する問題が浮き彫りになってきたんです。
松田:主に2つです。
1つ目は、ノウハウの流出。システムやサービスサイトを外注し続けると、僕たちが積み重ねてきたノウハウが制作会社に流出してしまうんです。二次転用される可能性もありますし、決して安くはない費用を払って開発を依頼しているのに対し、お金だけではなくノウハウも出ていってしまうというのが1つ目の問題点です。
2つ目は、スピード感の遅さです。外注をした場合、インハウスと比べるとどうしてもコミュニケーションコストが高くなってしまうため、開発スピードは遅くなります。加えて、制作会社の方々は不動産業界の現場の課題やニーズを把握しているわけではないので、ヒアリングにも多くの時間が必要。そのヒアリングの精度によっては、多くの手戻りが発生することもあるんです。
なので、中長期的に見たときに、できるだけ外注からインハウスに切り替えていきたいと思っていました。
松田:はい。「M&Aのご提案を受け入れる」という決断をするに当たって、エンジニアの数が決め手になったと言っても過言でないくらい魅力的でした。
松田:おっしゃる通りです。初めて樋口さんとお話しした時から悩み続けてきました。
本音をお伝えすると、僕は自分自身でモダンスタンダードをもっと大きな会社にしていきたかったんです。そのために、綿密な計画を立て、抜かりのない準備をしてきました。傲慢だと言われるかもしれないですが、その計画通りにやれば上手くいくと信じて走り続けてきたんです。
だからこそ、「GAテクノロジーズグループに入った方が、モダンスタンダードを成長させることができる」と自覚した時は本当に悔しかったですね。
松田:はい。会社の成長速度や組織体制などあらゆる話を伺った上で、GAグループに入ることがモダンスタンダードにとって最良の選択だと考えました。
樋口さんの熱意も決断の後押しになりましたね。約10年間モダンスタンダードという会社を経営してきたので、会社や社員、サービスに対する想いは誰にも負けないという自負はありました。しかし、樋口さんにお会いしてから、初めてその自負が揺らいだんです。「この人は、もしかしたら僕よりもモダンスタンダードのことが好きなんじゃないか?」、そう思わされるほどの熱意と勢いが樋口さんにはありました。
「GAテクノロジーズだから」という理由も勿論ありますが、樋口さんだからこそモダンスタンダードを託しても後悔しない、と思いましたね。
松田:モダンスタンダードだけでは実現することができなかった夢や目標が、GAテクノロジーズグループに入ることによって一気に現実味を帯びてきています。この恵まれた環境を生かすも殺すも自分次第。今後が楽しみであると同時に、「これまで以上の覚悟を持って仕事に臨まないといけない」という責任も感じてますね。
正直なところ、「世界のトップ企業になる」という樋口さんの夢に最後までついていける自信はありません。ただ、モダンスタンダードを創業してから掲げてきた夢・目標は、樋口さんが描く道のりの途中までは重なっています。なので、そこまでは責任を持ってやり抜くつもりです。
その後のことは、そこまで辿り着くことができたら改めて考えるつもりです。
(※1)Communication Design Center : 広報やブランディング、イベント、クリエイティブ制作、社内ポータルサイトの開発・運営など社内外におけるあらゆるコミュニケーションを統括する部署。
(※2)SEO : Search Engine Optimization(検索エンジン最適化)の略称。一般的に、検索結果でより上位に表示されるように行う手法のことを指す。
(※3)RENOSY(リノシー):GA technologiesが運営する不動産テック総合ブランド。https://www.renosy.com/