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2019年11月のCxO制度導入を機にスタートした新たな役員・CxO就任者へのインタビューシリーズ。当シリーズでは新任者の経歴や就任の背景、そして今後の目的・意気込みについてインタビュー形式でお届けします。
3回目となる今回、インタビューするのは、新たにChief Marketing Officer(最高マーケティング責任者、以下CMO)に就任した田吹 洋(たぶき ひろし)です。
インタビュアー:川村佳央
編集・構成:近藤英恵(@Konchanmax10)
田吹:きっかけは大学時代に遡ります。
当時はDJの活動をしていたこともあり、音楽イベントの企画ばかりしていました。
イベントで最も大変なことは集客で、ポスターやビラを作っては大学構内に貼らせてもらったり、渋谷や六本木などで配ったりしていました。それでも十分な人数を集めることは難しく、電話やメールで地道な営業活動を行うなど、考えられる全ての手段を尽くしていました。
その頃、ちょうどブログが流行り始めたので、試しにブログを開設してイベント写真をアップしてみたんです。すると今まで集客に苦労してきたイベントに、ブロクきっかけのお客さんが続々とやってきてくれて『ネットってすごい。これは間違いなく時代を変える』と感動したことが最初のきっかけです。
新卒で入社したイマジニアでは、キャラクターをデジタル化したコンテンツ(キャラクターコンテンツ)の配信を行なっていました。
この頃はiモードが爆発的に増えていき、携帯でインターネットを使うことが始まりだした時期でした。そのためインターネットで物を売るといった概念はなく、占いや天気などのコンンテンツ利用が一般的な使われ方でした。さらには『インターネットは怪しい』と思われていた時代でしたので、社員数も多くなくプロジェクトメンバーも4・5名と少人数でした。そうした環境のなかで、コンテンツにするキャラクター探しから配信内容の企画、キャラクターのグッズ販売を(ネットで)始めてみるなど、様々な施策を実施してきました。
コンテンツを通じて獲得したライセンスは、販売促進のキャンペーンなどを企画する代理店や大手企業に提供することで新しい利益を生み出すことができる。こうした インターネットは、リアル(現実)でも通用する という経験は私にとってデジタルマーケティングの可能性を確信させるものとなり、よりターゲットの広いマーケティングに興味を持つようになりました。
生活に密着したサービスに惹かれカカクコムに転職し、サービス企画やアライアンス営業などの業務も経験しつつ、主軸はマーケという形で約5年ほど在籍しました。その後はスタートアップを数社経験しましたが、一貫してマーケティングに携わっていました。
GA入社前は、自分で会社を経営していたので、その資金調達を目的に樋口さんにお会いしました。しかし事業内容の説明をしていくと「ダメだね。リアルがなくてデジタルだけで商売してるじゃん。」と一刀両断されてしまい、「これからのビジネスはAmazonのようにネットもリアルもやっていく事業じゃないと成長し続けることはできない、だからうち(GA)でやったほうが早いよね。」と言われ、なぜか妙な納得感があったんですよね(笑)。
そこからGAの話を色々聞いていくと、リアル(不動産販売)をやりながらテックの人材も確保して事業を展開していると。普通は一番めんどくさくて時間もかかる嫌なビジネスモデルを既に形にしていたんです。
IT業界のビジネスモデルって、一番美味しいところ・一番効率のいいところでサービスを展開して、それ以外のリアルの部分は実業を行う他社にやってもらうというのが一般的だと思っています。それがもしリアル面まで自社で行うとなると、時間も手間もかかるしめんどくさい。そもそも、そんなめんどくさい道を選ばずともIT領域だけで十分利益を獲得できているから、リアルに踏み出す必要なんてないんです。
ただ、確かに、リアル×テックを自社で展開したAmazonの成長は目覚ましく、一気通貫のビジネスモデルが可能にする「翌日お届け(サービス)」を体験してしまったユーザーの多くが、他社サービスから離脱しているのもわかっていました。リアル×テックのニーズをわかっていたけど、どこか信じたくないような部分だったんですよね。
そういった自分でも薄々気づいていたことを真正面から言われて素直に納得できましたし、しかも樋口さんは既に「リアル×テック」のビジネスモデルを始めていて、『こんなチャレンジングな人がいるんだな』と惹かれました。他にも、一気通貫のカスタマージャーニーをトータルで見ることのできる面白さに惹かれたこともあって、迷いなく入社を決めましたね。
2018年10月に入社し当時5名だったマーケチームも、事業の成長と共に拡大し、今では30名を超えるの大所帯になっています。この30名は全員がマーケターというわけではなく、カスタマージャーニーを作り上げるうえで関わるディレクターやWebデザイナー、フロントエンドエンジニアも含まれており、GAではProduct Planning Division(以下、PPD)と呼ばれる部署に所属しているメンバーです。我々PPDは、「不動産取引をもっと身近に円滑にする」をミッションとしており、不動産取引における一気通貫のサービスでどのようなカスタマージャーニーを構築するべきかを日々検討しています。
GAではリアル(現場)×開発(テック)×マーケティングが密接であることが強みです。
今の時代に、プロダクトとマーケティングが離れて考えていると、それはもうスピード感が遅い。変化していく市場や顧客のニーズにいち早く対応できるかがサービス差別化の重要なポイントです。そうしたことを考えると、エンジニアがマーケティングもわかり、フロントエンドエンジニアは基本UXを考えている、プロダクトマネージャーは先の先まで見据えたプランチェックを行い続けているような状態が本当は理想だとは思っています。
今のGAでは極限までプロダクトとマーケの時差をなくすことが大事だと思っているので、リアル(実業)を行う部署と開発、そしてマーケで定期的なMTGを行うこともGAでは当たり前な日常ですね。
基本的には会社として掲げている中長期の目標を達成するためのマーケティング活動を第一に取り組んでいきます。ただ、目標達成のためのマーケティングでは、その先の競争に勝つことはできないと思っています。そのため、いかにプロダクトとして差別化していくのか。カスタマージャーニーで考えた時の顧客価値をどう変革できるかが肝となってきます。
カスタマージャーニー全体の質の向上を考えていった時、在庫や人員といった物理的な制約に囚われてしまうと顧客価値優先のプランは立てられません。一方でデジタル目線のある意味 理想像 を貫くことができたら、それは顧客価値を向上しプロダクトとしての差別化に寄与すると考えています。
非デジタル領域では、いかにリアルでしか再現できないレアな体験を顧客に提供していくか。そして、デジタルが介入した領域では、いかに理想像を実現していくか。GAは両方実現できる土壌があります。こうした強みを全面に活用していくことで、新たな体験の創造に努めていきます。
そして忘れてはいけないのが、日本のPropTech(不動産テック)を牽引するリーダーとしての目線です。これまでGAが培ってきたアセットを他社にも提供することで、業界全体の顧客体験を変革していかなければならないと思っています。それは当然のことながら、日本だけでなく、中国とかシンガポールとかワールドワイドでも体現できるようにするつもりです。
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