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新型コロナウイルスの感染拡大は、世界経済に影響を与えています。各国で相次ぐロックダウン、外出規制等は不動産市場にも影響を及ぼし、世界各地で不動産取引や業務、不動産のあり方そのものが問われ始めています。そのような中で、テクノロジーを活用した不動産・建設領域のPropTechスタートアップによる動向は世界各地で一層盛り上がりを見せており、各国間のコミュニティ連携も活発化しています。
今回のGA MAG.では、そんな状況下、5月29日に開催された株式会社デジタルベースキャピタル様主宰「これからのPropTech(不動産テック)の未来とは -日米PropTech経営者・VCが語る-」のイベントレポートをお届けします。サンフランシスコにてPropTech領域に挑むAnyplace 内藤聡氏、日本初のPropTech特化型VCを運営する株式会社デジタルベースキャピタル桜井駿氏と共に、弊社代表 樋口とイタンジ代表 野口が「アフターコロナ時代におけるPropTechの未来とは」というテーマについて議論しました。
全3編の最後となる当記事では、パネルディスカッションの後編とQ&Aセッションの様子をお届けいたします。
桜井 駿氏(以下、桜井):最後にアフターコロナも含めて皆さんが会社として投資をする、注力していく領域がどの辺りかを教えてください。またフリップ形式でいきましょう。
桜井:樋口さんはワンストップ関連。イタンジ野口さんがDXの礎となる物件データ。で、Anyplace内藤さんがネットワークエフェクト。それでは、内藤さんからネットワークエフェクトということで教えていただけますでしょうか。
内藤 聡氏(以下、内藤):コロナがあろうがなかろうが、この分野に投資をしていくことは決めていました。シリコンバレーでは資金調達時とかVCと会うと絶対に聞かれることがあって、「ディフェンシビリティはなんだ」と。競合優位性みたいなものですね。こっちでユニコーンになっているような企業は、大体強いディフェンシビリティがあります。
ディフェンシビリティは大きく分けて4つあると言われていて、一つはネットワークエフェクト。もう一つはブランド。次は規模の経済、スケールですね。最後はスイッチングコスト・エンベッド。その4つのどれに当てはまるかをすごい見られています。
中でもネットワークエフェクト。日本語で言うと、ネットワーク外部性ですね。それは一番強いディフェンシビリティだと言われています。特にマーケットプレイスのビジネス。メルカリもそうですし、Airbnbもそうですし、そういったマーケットプレイスのビジネスではネットワークエフェクトが凄く大事だと言われてます。
ネットワークエフェクトはどういうものかというと、使う人が増えれば増えるほどプロダクトの価値が上がっていく。要はAirbnbだったらホスト増えれば増えるほど、ゲストはたくさん宿泊する場所を選べるのでゲストが増えると。ゲストが増えれば増えるほど、ホストは売れるのでどんどんリスティングを掲載したくなる。そうすると、マーケットプレイスの価値が上がっていきます。
我々もグローバルな規模でネットワークエフェクトを作るチャンスだと考えています。コロナが起こってからショートタームレンタルのオペレーター、ホテルとかバケーションレンタルのオペレーターが弊社のプラットフォームに興味を持ってくださってるので、これを機に世界中どこでも主要都市にはAnyplaceの物件がある、というネットワークを築いていくことに注力していきます。
桜井:まさにネットワーク外部性というところだと、いろんな世界中のエンドユーザーの人たちにとって魅力的な物件が集まっているっていうのは、エンドユーザーの人たちからとったらブランドだし、Anyplaceにとっても物件を持っている人たちにとって良いプラットフォームだってことがブランドになると思います。
実際にブランドの構築みたいなところで、コロナ前後で変化があったのかないのか。そして、今後ブランドを向上させるみたいなところで、これからやっていくことはありますか?
内藤:はい。アフターコロナで考えると、リモートワークはどんどん広まっていって、デジタルノマド的な生活をしてみようっていう人が増えてくると思うんですよ。僕たちはその人たちをどれだけエンゲージできるか、みたいなところに注力しようと思っています。
ノマドなライフスタイルをしたい人はうちで選んでもらうのが一番、というブランディングであったりとか、そういった機能をどれだけつけられるか。先ほど言ったみたいに、コミュニティであったりとかロイヤリティプログラムであったりとか、使えば使うほど便利になっていく。楽しくなる、安くなるっていう仕掛けをどれだけできるかというところですかね。コロナの期間でデマンドは空いてますけど、それを準備するっていうフェーズです。
桜井:ありがとうございます。では、次野口さんお願い致します。今後の投資分野ということで。
野口 真平(以下、野口):DXの礎となる物件データ。物件だけではないんですけど、データですね。これは何を言っているのかというと。私がこの緊急事態宣言の最中でいろんな不動産会社さんからお問い合わせをいただいて、「デジタルトランスフォーメーションしていかないとまずい」というマインドセットは形成されてきました。しかし、「それじゃ、やっていこうぜ」となった時に、それを阻む要因がありまして。まず、一番にデータがないと。
物件データがマイソクになっていたり、電話でのやり取りをしてるからログが残らないとか。そういう状況になっているので、デジタル化しようとしても、「事務所にファックスが届くんだ」とか、「事務所の固定機に電話がかかるんだ」みたいな状況なんですね、不動産業界って。まずは、これをとにもかくにもデータ化しないとデジタルトランスフォーメーションっていうのはできなくて、そのために物件データ自体を統一するタイミングだと思っております。
特にさっきのサービス紹介でもあった申込受付くん。これでリアルタイムな物件情報を集めていけば、取引全般のデジタル化が進んでいくので、今はとにかく物件情報を集めるというところにフォーカスしています。内藤さんの話にも近いんですけど、我々もサプライサイドを集めていって、その後にネットワーク効果ができるのかなと思っております。
桜井:物件データを集めていくみたいなところでいうと、情報全体を業界としてオープン化していくという話。そして、ネットワーク性というところで、自社のコミュニティで良質なデータを集めて、それを元にさらに情報が集まってくるという。どの道を通ってもなかなか良いデータをリアルタイムで集めるのが難しいというのは、もともと業界全体の課題でもあるのかなと思っています。
結局DXのベースとなってくるのはデータ、これは不動産業界に限らず全産業言えることだと思うんですけど、そういう意味でのイタンジのポジショニングみたいなところってお聞かせいただけないでしょうか。
野口:そういう意味でいうと、先ほどサービスを熊マークで「増えていきました」みたいなお話ししたと思います。ぶっかくまが出て、申込受付くまが出て、内見予約くまが出て、更新退去くまが出てみたいな感じで、管理会社へのフルセットを提供できるようなオンリーワンの企業にはなりましたと。そして、申込受付くんという領域を切り取ると、その領域ではナンバーワンになりましたと。
その中で、すでに効果が出始めてるなと思うのは、電子申込の利用者っていうのは入居者と仲介会社と管理会社と保証会社なんですね。この領域のネットワーク効果っていうのは、管理会社間だけで完結するものではなくて、利用者側の仲介会社とか入居者さんが増えていくっていうのも関連しているんですね。例えば、電子申込数が3月にピークを迎えて2万5千件になったっていうのも、実は仲介会社が圧倒的に利用し始めたんです。
まさに、この仲介会社に浸透できたのが今の所我々だけなので、これを追随するのは他の企業では難しいかなと思っています。結構手前味噌ですけど、有利な立場になってしまったなと。
桜井:なってしまった(笑)ありがとうございます。
では、GA 樋口さんいかがでしょうか?今後の重点投資ということで。ワンストップ関連。
樋口 龍氏(以下、樋口):そうですね。今回のコロナでものすごく感じるのは、やっぱりインターネットって使ってもらうまでが大変で、使ってもらったら離れられない。僕もコロナ禍になる前はUber EatsとかUberとか、ネットで洋服買うなんてやったことなかったんですよ。でも、今回のこの2ヶ月でめちゃくちゃ使って、使っちゃうと離れられなくなる。
この不動産業界全体の問題というのがそもそもDX化しなくても成り立っていた。なおかつカスタマー側からしてもトランザクションが少なく日用品みたいに買わないので、そもそも効率化をあまり求めていませんでしたし、あまり分かってなかった。そういった非常に使ってもらうことが難しい、というのがこの業界の大きな問題でした。ただ、このコロナの影響で、企業側もカスタマー側も使うっていうことにまず慣れ、使ってみると絶対離れられなくなることが本当に証明されたかなと思ってます。
そういった中だと、さっきのワンストップっていうことの効果、価値っていうのはカスタマー側もより理解してもらえるんじゃないかなと。要は不動産関連以外でも様々なサービスがネット化されて非常に効率が良いな、というのはものすごく感じたと思うんですね。それが不動産側でもよりシームレスに体験できると、離れられないような状況を作っていけるんじゃないかなと。
なので、我々としてはワンストップに関連するような領域に関しては引き続き投資していき、不動産の売買の領域に関しては変えられていくのかなと思っております。
桜井:ありがとうございます。やっぱりその導入のハードルが高いところと、結局導入した後定着するかっていうのは、お客さんに対してでも、従業員に対してでも結構あるのかなと思ってるんですけど、GAテクノロジーズは今従業員って何名でしたっけ?
樋口:約500名くらいですね。
桜井:500名くらいですよね。GAテクノロジーズはさっきおっしゃってたリアル系でもともとやられてたんで、リアル・オフラインが得意というかそこを住処にしていた従業員の方々と、もともとオンラインをベースでやっている従業員と、そもそも属性の違う人たちがいる。おまけに人数も多くなるっていうとところで、他の会社さんからみると、そもそもそこはどうやってやっているのか気になると思います。
そこでのワンストップ関連でいうと、注力というかポイントみたいなものってあったりしますか?
樋口:うちも苦労したところではあるですけど、これってまず双方が強くならないとOMOって完結しないんです。
双方って何かっていうと、まずテクノロジーは置いておいて、リアル側のオペレーションがある程度整っているかどうか。逆に開発側でいったら、開発側のプロダクトがそもそも使えるものになっているかどうか。
僕らも初期に苦労したのは、エンジニア側が現場を理解してないので、出来たプロダクトを現場が使わないという現象があったんですね。なので、プロダクトも強くなり、リアル側も強くなる。そうすることによって、はじめてネットとリアルの融合が成り立つんです。
なので、当然DXというのは重要なんですけど、リアルを産業としてやっている会社さんであれば、まずリアルの組織設計が効率化されているかどうか。そこに向き合うべきっていうのは、我々はリアルの組織を運営していてめちゃくちゃ感じることですね。
桜井:なるほどですね。ありがとうございます。
お時間になってきましたので、パネルはこのあたりで終了したいと思います。
桜井:まず個別ということでAnyplace内藤さん宛に、「Anyplaceさんのマネタイズポイントはどこでしょうか?住む人ですか?ホストですか?」。
Anyplaceのビジネスモデルについて、質問がきております。
内藤:ビジネスモデルはすごいシンプルで、物件側にコミッションを取っています。毎月、だいたい10%。ここは交渉次第なんですけど平均10%取っていて、お客さんは我々のサイトやアプリを通じて毎月家賃をお支払いただくので、そこから10%ずつコンスタントに安定して収益を得られるというモデルです。
桜井:これは、内藤さんたちから見た競合他社や類似の事業も基本的にはこのマネタイズのポイントになってるんですか?
内藤:基本的にそうですね。これって大きく分けてAirbnbみたいなCtoCのマーケットプレイスとBtoCのマーケットプレイスで分かれるんです。我々はBtoCのマーケットプレイスで、他のBtoCのマーケットプレイスでいうとExpediaとかBooking.comとかホテルを掲載しているところ。それは全部物件側から取り、ゲスト側からは取らない。というのはなぜかというと、ゲスト側に課金しちゃうと直接ブッキングされるリスクが発生しちゃうんです。ホテルの名前を検索すると探せちゃうので。
ただ、Airbnbは逆でホストから取らないで、ゲストから取ります。それはAirbnbがCtoCのマーケットプレイスなので、お客さんが直接探せないから。サイトとかもないので直接予約もできず、Airbnbを使うしかない。
立たされている立場が違うというのがあって、我々はBtoCのマーケットプレイスなので、基本的にはユーザーに優しくて物件側にはちゃんとした対価を払ってもらうという形になっています。
桜井:ありがとうございます。では、次の質問にいきたいと思います。「今、みなさんがゼロから事業を始めるとしたら、PropTechのどのような領域で行いますか?」。今実際にやっておられるので仕込み中の新規事業があるのかもですけど。
今日回答見ていると、もともと申込のリストは大手企業の皆さんが多いなという風に見てたんですけど、起業しますとかそういったコメントも来てましたので。もしよかったら自社でも、個人で樋口さんがGAを退任してでも(笑)
内藤:そうですね。僕はまだまだAnyplaceで始めたばっかりなので、Anyplaceでもう一回行くかなと。
ただ、コロナ後で考えた時に、「これあったらいいな」「チームでも使いたい人いるんじゃないかな」というので、リモートワーカーに特化したコワーキングスペースはありかなと思っています。いろんなところから働けるようになるし、通勤もしたくないとか。通勤好きな人いないじゃないですか、家の近くから働きたい。ただ、Work from homeやってみると結構大変な人は多いので、何かしらオフィスは必要というのは何かしらあると思います。
なので、カフェと今のオフィスの間みたいなコワーキングスペースで、マイクとか照明とかオンラインのミーティング用に管理されているリモートワーカーに優しいようなコワーキングスペースはあるんじゃないかなと思ってますね。
桜井:ありがとうございます。せっかくなので私は投資活動をしているという観点でいくと、内藤さんがおっしゃっていただいたような対象特化型というのは従来からあったと思います。ただ、慣れた領域でコミュニケーションしていたものが、皆がリモートワークになってくると、より業務であったり慣習に即したサービスですね。要はそういったツールを使えば、息をするように従来と同じようなコミュニケーションであったり手続きができる、みたいなところは注目をしてまして。
電子化とか電子契約というところでいうとDocuSignとか、日本でいうとクラウドサインがあると思うんですけど。こういったものも汎用的に使えるものもあれば、より業務フローに入り込んだ形で契約をベースにして色々な機能を使えるとか、それが業界に特化してたり、みたいなものも結構あるかなと思っていて。
対象者のリモートワーカーというところでいっても、今こういった危機的な状況に陥った時に、キャッシュやリソースが潤沢な人たちとそうでない人たちがいざアクションしようとなった時に、すぐに意思決定してアクションできるような人たちもいれば、そうはできない人もいる。まさにオフィスとかは日本でもよい例で、即断して解約したりした人もいると思うんですけど、それってごく一部のものだと思ってます。特化型でフレキシブルな領域っていうのは我々も注目してみておりますね。
多分質問いただいた方も起業を検討しているという質問なんだと思うんですけど、内藤さんはAnyplaceはどういう理由で始められたんですか?
内藤:僕はいくつか事業に失敗して、その時思ったのは「自分が欲しいもの。でも、まだ世の中にないもの」をやろうと思って、Anyplaceに行き着きましたね。引っ越す時に家具揃えたりとか、WiFiとか、電気を契約するのはめんどくさかったですし、もっと簡単にホテルを使う感覚で賃貸を利用できるものないかなと思って作りました。
まずトレンドで考えると日本は良いかもしれないですけど、アメリカではトレンドになってるものは遅いんですよね。それはトレンドを作っている人たちが仕込んでいるものなので。Airbnbもそうですし、Uberもそう。Uberが出る前はオンデマンドなんて言葉なかったですし、Airbnbが出る前はシェアリングなんて言葉なくて、だいたいAirbnb後のシェアリングって言っているサービスはだいたい上手くいってないんですよ。
そういうのもあって、本当のゼロイチを作る、大きな事業をするんだったら「自分がめちゃくちゃ欲しい。でも、世の中にないもの」というのは大事かなと思ってます。
桜井:ありがとうございます。他も質問がきていますが、新規事業でいうと野口さんいかがでしょうか?
野口:そしたら、今っていうタイミングだと違うかなと。違うっていうのは、私が今本当に始めるのであれば、やっぱりファイナンス関連だと思います。
例えば、今って住宅ローンが支払えない人がこれから急増するでしょうし、その中で日本の住宅ローンの課題ってすごい大きいと思っています。大きな借金をして、それを現金化するのに対してものすごいハードルがあると。当初買った値段から相当下がって競売とかになってしまう。ここに急激に課題が出てくるんじゃないかなという感覚はありまして、もしスケールすることとか、ビジネスポテンシャルとかで考えると、ここに目をつけるかもなというのはあります。
桜井:ありがとうございます。樋口さんも何かあれば。
樋口:やっぱり不動産って規制産業で70年前からあるので、当然そのビッグマーケットを目指すっていうのは重要なことだなと思うんですけど、その中でも最初にホワイトスペースを見つけられるかどうかっていうのが重要かなと思ってます。
僕らも新規事業コンテストってやるんですけど、めちゃくちゃ良いアイデアが出てくるんですよ。「これ、全部やってもうまくいくな」みたいな。それってなんでかっていうと実業が分かっているからこそ、プロダクトアウトにならずにマーケットインできるから。なので、質問者の方が実業に詳しいのであれば、多分目の前の課題ってあると思うんですね。日本の場合、特に資金力なくいきなりビックマーケットに行くとすぐにやられてしまうので、ホワイトスペースを見つけて、そこからニーズマッチし、そこからビッグマーケットを取りに行く。我々GAグループの戦略でもあるんですけど、そういうやり方かなと思います。
桜井:ありがとうございます。あと何問かいきたいと思います。
「GA様にご質問です。不動産価格が変動しやすいフェーズですが、どのように売買価格を決めているのでしょうか?一消費者的には買い叩かれているのではないか、と不安な部分があります。」というご質問がきています。
樋口:この直近4~5年で変わってきたのが、成約データってアメリカの場合だったら基本的にはMLSに登録しないといけない義務があるので成約データが透明化されているんですけど、日本の場合レインズに登録する義務はないので、全体で2~3割のデータだと思います。
ただ、うちのサイトもそうですし、他の各社のサイトをとったとしても最低の価格推移、価格推定、制約データってわかるので、そこに関しては日本もこの4〜5年で最低限は進んできたかなと。なので、そこに不安がある場合は、弊社のプロダクトでも他社のプロダクトでも使っていただくと、そのあたりの不安を解消できる下地は日本の不動産にも出てきたかなと思っています。
桜井:なるほどですね。
続けてなんですが、GA・イタンジの皆様へご質問です。「コロナ後のリモートワークが促進される状況において、現在のオフィスをより縮小していくかなど自社のオフィスに関してはどのようなお考えでしょうか?」
ということで特にGAのオフィスは僕らもよくお邪魔してますけど、そもそもこの後のオフィスの役割というのを各社の皆さんどうお考えでしょうか?
樋口:当然無駄な部分もあると思うんですよね。言ったようにリモートでできる部分と、できない部分。なので、我々も今までだったら人数に応じてスペースを確保してきたっていう背景があるので、じゃそれが今後人数に応じてオフィスを拡大するかって言ったらそれは考えづらいかなと思ってます。ただ、GAにおいてはネットとリアルっていう非常にコミュニケーションが重要な部分があるので、全リモートっていうのは我々の場合今の局面では無理かなと。逆にコミュニケーションをより近く。
リモートでもできるんじゃないかっていう意見もありますけど、でもディティールに関してはやはり対面が重要だと思っているので、効率化はしていくけども全リモートでオフィスを廃止するみたいな方向性にはならないかなって考えています。今の所は。
桜井:ありがとうございます。野口さんはいかがでしょうか?
野口:オフィスの借り方って、ほとんどは年契約というか2年とかになってしまうので、なかなか拡張、下げようとしてもできないという状況がありますと。なので、すぐにはできないんですけど、ただ中身に関しては変えていかないといけないと思っています。リデザインというんですかね。
例えば商談するときのスペースが密になっちゃうので、会議室一つあたりのスペースを大きめにとっていくとか。後は商談スペースが個別にあるんですけど、もっと大量に増やしていく必要があります。今まで訪問していたものがオンライン上で商談することになって、社内にいる時間ってむしろ増えていくんですね。ただ、スペースがセパレートされていないと個人情報とか適切な商談ができないっていう問題になるので、オフィスの中での考え方・コンセプトは変わるかなと思ってます。
内藤:それに関して言うと、こっちで起こっていることとして、選択制になるっていうのはあると思うんですね。Twitterとかもそうですし、ShopifyやSquareとかも、リモートで働きたい人は永久リモートでも良いし、オフィスでパフォーマンスが出る人もいるので、そういう人はオフィスに来て、みたいな感じで選択できるようになっていくと思います。かつ、リモートの人はリモートの人で、地域によって給料が変わってくる。結局、地方とか安いに行くと、それに合わせた給料になっていくみたいなのはこっちで起きてますね。
野口:話が脱線しちゃうんですけど、内藤さんにお伺いしたいことがあります。
日本だと解雇はしづらい、欧米だとそれがしやすいというイメージがありまして。リモートワークの時の業績のトラッキング、個人の成果のトラッキングみたいなのってどういう風にやられているのかお聞きしたいです。
内藤:そうですね。まず大前提として解雇めちゃくちゃしやすいです。「今日で終わりだよ」って言ったら解雇です。お互いに解雇前提の関係性なので、すごい緊張感があるというか、こっちにいてそういう感覚はありますと。
で、パフォーマンスっていう意味だと、成果主義でパフォーマンスがすごい重視されます。その中でも我々は透明性を重視していて、ダッシュボードに行けば会社のデータがほとんど見れます。各チームのKPIとか、個人の業績もダッシュボードに行けば基本的には全部見れるようになっているので、結局解雇される人って納得感があるんですね。チームとしても会社としても。もちろん会社としては業績が上がるようにサポートしますし、適切なプロセスは踏むんですけど、そういう数字に関しては見せますね。
野口:ありがとうございます。
桜井:そろそろ時間になりましたので、最後に私宛の質問に答えさせていただきます。
「桜井さんに質問です。コロナ影響の中不動産テックに特化したVCを運営するのにあたり、LPからキャピタルコール等LP側の変化はありますか?という質問がきてまして、変化があるか、というところでいうと変化がありません。
我々のファンドに出資をするという意思決定を、このコロナの状況においてもしてくださる方々が現実問題いらっしゃっていてですね。これは我々にとってというよりも、スタートアップとか、もっと言うと不動産テックとか、こういう業界の根本の変革というのに期待をいただいている会社さんが増えています。もちろん、エコシステムが育ってきているみたいなところもあると思います。我々としては、当然投資の意思決定やスピードっていうのは正直コロナ後は慎重にならざるを得ない、という現実はあるんですけども、これが今直接的な影響になっているかというと実はそんなことはないです。
今日出ていただいたイタンジの野口さんたちの話みたいに、これを機に変革をしていきたいとか、これを機にこれまでのビジネスモデルを見直す、という事業ポートフォリオを考えられている方が多いなという印象を持っています。というのを、最後回答とさせていただきます。
では、少しだけ伸びてしまったんですが、本日お集まりいただきまして、ありがとうございました。内藤さんもアメリカからご参加いただいて、樋口さん、野口さん、運営の皆さんもありがとうございました。こちらでイベント以上とさせていただきます。
2020年5月29日開催の「これからのPropTech(不動産テック)の未来とは -日米PropTech経営者・VCが語る-」の書き起こしとなる当記事。全3編の長編となりましたが、最後までお読みいただきましてありがとうございました。
最後になりますが、以下に当イベントのアーカイブ動画を掲載しております。
書き起こし記事では伝えきることのできない登壇者の方々の熱量を、ぜひ動画を通して体感していただければと思います。
vol.1 アフターコロナ時代におけるPropTechの未来とは?
vol.2 緊急事態宣言下に起きた変化とアフターコロナにおける重要なキーワード
vol.3 日米PropTech経営者が語る。アフターコロナを見据えた、今後の重点投資領域(当記事)
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。